DX人材とは?企業に必要な力と、社内で育てるための第一歩
この記事でわかること
- DX人材が担う仕事と、求められる力
- 自社に必要な役割を整理し、採用や育成につなげる考え方
- 身近な業務を題材に、人を育てる進め方
こんにちは!
「DXを進めたいけど、どんな人に任せればいいんだろう」
採用や育成を考えるとき、ここで迷うことはありませんか。 システムに詳しい社員はいても、会社の仕事を変える役割まで頼んでいいのか。 現場をよく知る社員には、技術の勉強から始めてもらうべきなのか。 「DX人材」という言葉だけでは、任せたい仕事が見えにくいですよね。
DX人材を考えるときは、自社で何を変えたいかを決めるところから始めましょう。 この記事では、納期確認の業務を例に、必要な人材像と育成の進め方を考えます。
DX人材は、デジタル技術を使って事業や業務の変化を進める人
DX(データやデジタル技術で事業や組織を変え、新しい価値を生むこと)を担うのがDX人材です。 変える目的を考え、必要な仕組みを作り、実際の仕事として定着させる役割があります。 IT(コンピューターなどで情報を扱う技術)の知識も、その実現を支える大切な力ですね。
たとえば、紙の注文書をデータにすれば、注文内容を検索しやすくなります。 これは、今の仕事を効率よく進めるためのデジタル化です。 その情報を使って、顧客へのサービスを変えることも考えられるでしょう。
在庫や出荷予定をもとに、顧客が注文前に納期を確認できる仕組みを作るとします。 顧客にとっては、営業担当者からの返事を待たずに購入を判断できるサービスです。 データを使って取引の進め方や顧客への価値を変える、DXの一例になります。
実現するには、画面の開発とあわせて、社内の仕事も見直したいところです。 在庫は誰が更新するのか、予定が変わったらどう知らせるのか。 こうした運用を関係者と決める仕事も、DX人材が担います。
必要な力を、具体的な仕事で考えてみる
自社に必要な力は、解決したい課題に当てはめると考えやすくなります。 ここでは、営業担当者が納期の問い合わせに追われている会社を、仮の例にしましょう。 顧客が自分で納期を確認できるサービスを目指し、まず社内の確認作業を調べる場面です。
困りごとの原因を、現場で確かめる力
「納期回答を早くしたい」という要望を、改善できる課題まで具体的にする力が必要です。 営業担当者が困っていても、原因が営業の仕事にあるとは限らないんですよね。
話を聞くと、倉庫からの返事を待つ時間が長いとわかったとします。 倉庫では在庫表の更新が追いつかず、問い合わせのたびに商品を数えているのかもしれません。 この場合、在庫を表示する画面を作っても、情報が古ければ確認の電話は残るでしょう。
困りごとを聞いたら、実際の作業と情報の流れまで確かめることが大切です。 誰が、どの情報を、いつ更新しているのかを調べると、見直す箇所を絞れます。 日頃からミスの原因を調べ、他部署に確認している社員には、その経験を生かしてもらえそうですね。
技術を理解し、解決方法を相談する力
業務を整理する担当者にも、技術の説明を聞いて判断するための基礎知識は必要です。 プログラミング(コンピューターを動かす処理を書くこと)を、全員が担当するわけではありません。 ただ、提案された仕組みで現場の課題を解決できるかは、一緒に確かめたいですよね。
在庫を共有する仕組みなら、技術担当者とこんな点を話し合います。
- 今のシステムにある在庫情報を使えるか
- 入出荷後、どのタイミングで情報が更新されるか
- 社員と顧客で、見られる情報を分けられるか
- 導入後の管理に、どれくらい費用や手間がかかるか
「在庫の更新が翌日になるなら、当日の納期回答には使いにくい」と伝えられれば、検討が進みます。 わからない用語が出てきたら、実際の仕事でどう動くのかを説明してもらいましょう。 現場の要望を技術担当者に伝え、技術上の制約を現場に説明する、通訳のような役回りです。
関係者と調整し、使いながら改善する力
新しい仕組みを続けるには、使う人の負担まで含めて仕事を組み直す必要があります。 営業の電話が減っても、倉庫の入力作業が増えすぎれば、更新が後回しになるかもしれません。 部署ごとの事情を聞き、無理なく続けられる方法を探したいですね。
たとえば、入出荷の記録と在庫の更新を一度の入力で済ませられないか、技術担当者と検討します。 情報の間違いが見つかったときに、誰へ連絡するかも決めておきましょう。
導入後は、納期回答にかかる時間や誤回答の件数を、導入前と比べます。 倉庫の作業時間も確認すれば、負担が別の部署へ移っただけになっていないかを確かめられるでしょう。 現場の声と数字をもとに修正するところまでが、担当する仕事です。
必要な役割は、チームで分担する
自社に必要な力は、複数の人が補い合う形で考えて大丈夫です。 業務をよく知る社員と、開発を担う専門家では、得意なことが違いますよね。 任せる仕事を分けると、社内で担える役割も見つけやすくなります。
IPA(情報処理推進機構)の「DX推進スキル標準」も、役割を分け、互いに連携する考え方を示しています。 たとえば、ビジネスアーキテクト(変革の目的や進め方を考え、関係者と実現を進める役割)です。 技術を使って何を実現するかを定め、成果につなげる仕事が位置づけられています。 出典:IPA「DX推進スキル標準」
納期確認の例なら、次のような分担が考えられます。 これは、自社の体制を検討するための一例です。
| 担当 | 任せたい仕事 |
|---|---|
| 営業・倉庫の担当者 | 現在の作業や例外を説明し、試した仕組みを確かめる |
| 推進担当者 | 目標を整理し、部署間の調整や改善を進める |
| 社内の技術担当者・外部の専門家 | 仕組みの設計や開発、情報を安全に扱う対策を担う |
| 経営者・部門責任者 | 優先順位を決め、予算や担当者の時間を確保する |
小さな会社なら、一人が複数の役割を持つこともあるでしょう。 その場合は、本人が決めてよい範囲と、責任者に相談する内容を決めておきます。 他部署の作業を変える判断まで担当者だけに任せると、調整が止まりやすいからです。
採用・育成は、任せたい仕事に合わせて考える
採用や育成の前に、担当してほしい仕事を書いてみましょう。 「DXを推進できる人」よりも、業務が見える言葉にすると、必要な経験を具体化できます。
たとえば、「受注から納期回答までの流れを整理し、営業と倉庫の調整を進める」という仕事です。 社内で候補を探すなら、業務をよく知り、改善に関心がある社員が考えられます。 普段の仕事でどんな工夫をしているかを聞き、本人の希望も確かめたいですね。
専門的な設計や開発を担う人が必要なら、採用や外部への依頼も選択肢です。 必要な専門性と期限を整理すると、社内で学ぶ範囲と、専門家に任せる範囲を決めやすくなります。 採用面談では、似た課題で何を変え、結果をどう確かめたかを聞いてみましょう。
外部の専門家と進める場合も、社内には業務を説明し、提案を検討する担当者が必要です。 打ち合わせや現場への確認に使う時間も、担当者の仕事として確保したいですね。
社内で育てるなら、一つの業務で試してみる
育成では、研修で学ぶ機会と、実務で使う機会をセットにしましょう。 学ぶ内容を目の前の課題と結びつけると、何を理解できていないかも確かめやすくなります。 最初は一つの部署や商品群など、影響を確認できる範囲で大丈夫です。
❶ 改善する業務と目標を決める
納期確認なら、現在の回答時間や、確認のやり取りにかかる手間を記録します。 その記録をもとに、どこを改善したいか、現場と相談しましょう。 誤回答の件数も残しておくと、速さと正確さの両方を比べられます。
❷ 課題に必要な知識を学び、小さく試す
業務の流れを図にする方法や、データを集計する方法など、使う場面に合わせて学びます。 学んだら、実際の納期確認の流れを図にして、営業と倉庫に確かめてもらいましょう。 認識が違う箇所があれば、そこも改善を考える手がかりですね。
仕組みを試す段階では、技術面の相談相手と、困ったときの連絡先を決めておきます。 担当者が一人で判断に迷い続けないよう、定期的に相談できる時間も用意しましょう。
❸ 結果を振り返り、次に直す箇所を決める
試したあとは、開始前の記録と比べながら、現場で増えた作業も確認します。 思ったほど改善しなかった場合も、原因を確かめる経験が次の仕事につながりますよね。 在庫の更新が遅れているなら、入力の担当や作業のタイミングを見直してみましょう。
学び、試し、振り返る時間を確保することも、会社が担う育成の一部です。 兼務なら、部門責任者が既存の仕事量を調整します。 評価でも、研修の受講数に加えて、課題の調べ方や周囲との協力を見たいですね。
おわりに
自社に必要なDX人材を考えるときは、身近な仕事の中にある困りごとが出発点になります。 どこを変えたいかが具体的になると、任せたい役割や、足りない知識も見えてくるでしょう。
まずは、現場をよく知る人と、見直したい業務を一つ選んでみてください。 「何に困っているか」「どう変えたいか」「誰と進めるか」を、一枚のメモに書くところからで大丈夫です。 そのメモをもとに、社内で育てる人と専門家に相談する仕事を考えていきましょう。