加工実績を営業に生かす。技術が伝わる製造業サイトのつくり方
この記事でわかること
- 加工実績を、材質・用途・加工方法から探せるように整理する方法
- 対応条件や品質管理の情報を添え、加工の相談につなげるページ構成
- 営業担当者が更新し、社内で確認してから公開する仕組みのつくり方
「加工実績は載せているけれど、商談では毎回、別の資料を送っている」 そんな場面があるなら、掲載済みの実績に少し情報を足すところから始められます。 写真や説明文を集めてきた蓄積は、そのまま使える大切な材料です。
たとえば、営業がメールで伝えている材質や対応数量を、実績ページにも添えてみる。 発注を検討する設計や購買の担当者が、自社の依頼に近い条件かを判断しやすくなります。
今回は、精密加工会社を例に、製造業のホームページで技術を伝える方法を紹介します。 既存のページを見直し、日々の営業でも使える形に整えていきましょう。
加工実績に、発注者が比較できる情報を添える
実績ページには、発注者が「自分の依頼も相談できそう」と判断するための条件を載せます。 部品の写真に、材質や用途、加工上の工夫が添えてあると、相談の手がかりになります。
たとえば、アルミの部品写真を見ても、試作を一個から相談できるかまではわかりません。 「高精度な加工に対応」という説明も、どの部分をどう仕上げたかがわかると具体的です。 公差(寸法などに認められるずれの範囲)を載せるなら、対象箇所と条件も添えたいですね。
ここで使えるのが、営業担当者が普段受けている質問です。 最近の商談から「写真を見たあとに何を聞かれたか」を拾ってみてください。 材質の指定や数量、検査方法など、ページに補う情報を絞り込めます。
すでに十分な説明がある場合は、実績の探し方や相談先の位置を見直すことから試せますよ。
ステップ❶:材質・用途・加工方法から実績を探せるようにする
実績一覧には、発注者が持っている条件から探せる入口を用意しましょう。 公開順の一覧に、材質や用途ごとの分類を加える形です。
| 探す切り口 | 分類の例 | 想定する探し方 |
|---|---|---|
| 材質 | アルミ、ステンレス、樹脂 | 指定した材料の加工例を見たい |
| 用途 | 検査装置用部品、搬送装置用部品 | 似た使い道の部品を探したい |
| 加工方法 | 切削、研削 | 必要な加工を相談できるか知りたい |
切削は材料を刃物で削る加工、研削は砥石で少しずつ削る加工です。 サイト上でも加工名に短い説明を添えると、技術に詳しくない購買担当者も読み進められます。
一つの実績には、「アルミ」「検査装置用部品」「切削」のように複数の分類を付けます。 材質から探しても、用途から探しても、同じ実績にたどり着ける構成ですね。 名称がばらつかないよう、登録時には共通の選択肢から選ぶ形にしましょう。
個別の実績には、「アルミ」に加えて、材料の種類を表す記号も載せておきます。 たとえば、アルミ合金のA5052などです。 図面や製作記録にある表記を確認し、「材質:アルミ合金(A5052)」のように記載しましょう。 材料記号で探す方にも、図面の指定と照らし合わせたい方にも、判断の手がかりになります。 写真の中だけに入れず、ページの本文にも文字で載せておくとよいですね。
掲載件数が少ないうちは、分類ごとに実績を並べるだけでも始められます。 件数が増え、探しにくくなったら、複数条件で絞り込む機能を検討する流れです。 該当する実績がない場合には、条件を外す操作と、加工可否の相談先を表示してください。
一覧の各実績には、写真とともに材質・用途・加工方法を短く載せておきます。 タイトルも「加工事例01」より、「アルミ製の検査装置用部品」のほうが内容を伝えられますよ。
ステップ❷:一件の実績で、対応条件と品質管理を伝える
一件の実績に「何を加工したか」「どう対応したか」「何を確認したか」をそろえます。 写真の説明に加え、発注前の打ち合わせで使える情報を一ページにまとめる考え方です。
以下はページ構成の例で、実在する企業の加工実績ではありません。 掲載時には、実際の記録と公開できる範囲に合わせて内容を入れてください。
| 項目 | 掲載する内容の例 | 発注者が知りたいこと |
|---|---|---|
| タイトル・写真 | アルミ製の検査装置用部品。全体と細部の写真 | 似た部品を扱っているか |
| 基本条件 | 材料記号、用途、縦・横・厚さ、製作数量 | 依頼する材質や大きさに近いか |
| 加工内容 | 行った加工と、自社で担当した範囲 | どの工程まで任せられるか |
| 依頼時の課題 | 組み付け時の位置ずれを抑えたい、などの要望 | 同じ悩みに対応した経験があるか |
| 対応したこと | 穴の加工や確認で工夫した点 | 要望にどう対応したか |
| 品質管理 | 確認箇所、使った測定器、検査の段階 | 必要な品質をどう確認するか |
| 相談できる条件 | 試作相談や数量変更時の確認事項 | 今回の条件でも相談できるか |
| 相談先 | この実績に近い加工の相談窓口 | どこから相談できるか |
寸法は「縦100×横50×厚さ10mm」のように、方向と単位がわかる書き方にしましょう。 丸い部品なら「直径50mm×長さ100mm」と書くと、記号に詳しくない方にも伝わります。 「手のひらに載る大きさ」などの説明は、数値に添える補足として使えますよ。
品質管理の説明では、測定器の名前に「部品のどこを確かめたか」を添えましょう。 検査成績書(測定結果をまとめた書類)についても、提出した実績や相談条件を書けます。 設備紹介のページがあるなら、詳しい仕様はそちらにリンクすると読みやすいですね。
課題・対応・検査をつなげた掲載文の例
表の項目を文章にすると、次のように紹介できます。 以下は書き方を示す架空の例です。
検査装置に使うアルミ製部品を、試作として10個製作しました。 ご依頼では、組み付け時の位置ずれを抑えるため、二つの穴の位置関係が重視されていました。 そこで、部品を固定し直さずに両方の穴を加工できるよう、作業の順序を組んでいます。 加工後は、三次元測定機(部品の立体的な位置や寸法を測る装置)で穴の位置を確認しました。 測定結果は検査成績書にまとめ、部品とともに納品しています。 類似部品のご相談では、図面と必要数量を伺い、加工・検査の方法を検討します。
「高精度に対応」とだけ書く場合に比べ、依頼に対してどんな作業を行ったかが伝わりますね。 実際の掲載では、技術担当者に内容を確認し、記録で裏付けられる説明に整えてください。
今回の実績と、今後の対応範囲を分けて書く
過去に製作した数量や精度は、その案件での実績として示します。 材質や形状が変われば同じ条件で対応できるとは限らないため、相談時の確認事項も必要です。
たとえば「今回の製作数量:10個」と書き、その下に別数量での相談方法を添える形にします。 納期を載せる場合も、材料の調達や追加の加工を含むかを確認しましょう。 実績の数値と、現在引き受けられる条件を分けると、問い合わせ後の認識違いを減らせます。
対応可能な最大の部品サイズは、実績の寸法とは別に、対応範囲の欄へ記載しましょう。 設備に入る大きさと、部品を固定して実際に加工できる大きさは、分けて確認したいところです。 材質や形状による制約がある場合も添え、詳しい条件は図面を見て確認する流れにします。
写真の説明にも、「どの部分に注目してほしいか」を短く添えてください。 細部を写した写真なら、位置を決める穴や、仕上げた面を言葉でも示します。 画像が見られない場合に備える代替テキスト(画像の内容を伝える文章)も設定しておきましょう。
実績の内容を引き継いで相談できるようにする
ページの末尾には、「この実績に近い加工を相談する」など、目的がわかるリンクを置きます。 リンク先は、ホームページ上で相談内容を入力して送信できるフォームです。 電話で相談を受ける場合は、実績名や実績番号を伝えてもらう案内も役立ちますよ。
フォームには参照した実績名を表示し、送信内容にも含める形にしましょう。 営業担当者が同じページを見ながら、今回の依頼との違いを確認できます。 材質や数量が未定でも、その状態を伝えられる入力欄にしておくと話を始めやすいですね。
制作担当者向けの補足:画像の説明や目的がわかるリンク名は、音声でページを読む方にも役立ちます。 Webの標準をつくるW3Cの文章作成ガイドでも紹介されている考え方です。
ステップ❸:営業が下書きし、確認してから公開する
更新を続けるには、入力項目と、公開までに確認する人を決めておきます。 その際に使えるのが、CMS(サイトの内容を更新する仕組み)です。 営業担当者が決まった欄に文章や写真を入れる形なら、ページの構成を毎回考えずに済みますよ。
CMSの入力画面には、実績ページと同じ項目を用意しましょう。 材質や加工方法は選択式にし、課題や対応内容は短い文章で入力する形が考えられます。 写真や説明を入れたら、公開前の見え方を確認できるようにしておきます。
社内にある図面や作業記録から、公開用の情報をまとめる流れも決めたいところです。 たとえば、次のように役割を分担できます。
- 営業担当者が候補案件を選び、公開用の文章と写真を下書きする
- 技術・品質担当者が、加工条件や検査の説明を確認する
- 公開責任者が、取引先との取り決めや写真の公開範囲を確認して承認する
- 公開担当者が掲載し、確認日と次の見直し時期を記録する
下書きを編集する権限と、公開する権限を分けておくと、この手順を仕組みに反映できます。 今のCMSで対応できるかを確認し、不足する機能を制作会社と整理しましょう。
顧客の部品写真を公開できない場合の伝え方
NDA(秘密情報の取り扱いを定める契約)などで、顧客の部品写真を公開できない場合もあります。 その場合は、自社設計のサンプルを使って、紹介したい加工や検査を説明する方法を検討しましょう。
| 代わりに使うもの | 紹介する内容の例 |
|---|---|
| 自社設計のテスト加工用部品 | 穴や溝の加工箇所と、その寸法を確認する方法 |
| 公開できる自社設計の治具(加工や検査で部品を固定する道具) | 部品を固定する工夫と、使い方 |
顧客の図面や固有の形状を使わず、伝えたい技術を示せるサンプルを用意する方法もあります。 自社用の道具でも、顧客の秘密情報が含まれていないか、公開前に確認してください。 掲載時には「技術紹介用のサンプル」「自社用の治具」と明記し、受注実績との違いを伝えましょう。
顧客案件を掲載する場合は、写真の顧客名や図面番号、背景に写った資料も確認します。 会社名を伏せても、形状や用途から案件がわかる場合があるため、写真を含めて判断が必要です。 取引先への確認が必要な内容は、了承を得た範囲で掲載してください。
ステップ❹:商談メールで活用し、反応を記録する
最初は、営業でよく紹介する加工分野から数件を選び、ページを整えてみてください。 分類を付け、条件と品質管理の説明を補い、相談窓口までつなぐところを一度試します。 サイト全体の作り直しが必要かどうかは、既存の仕組みで試してから検討できますよ。
公開前には、社内の別の担当者に「アルミの試作例を探す」などの条件を渡してみましょう。 実績を見つけ、内容を読み、相談先を開けるかを確認します。 スマートフォンでも表の文字が読めるか、写真の説明が見えるかを確かめたいですね。
公開後は、営業メールや商談後の案内で、相手の相談に近い実績ページを送ります。 その際は、今回の依頼と共通する条件を一言添えると、見てほしい箇所が伝わりますよ。
たとえば、アルミ製部品を20個試作したいという相談を受けた場面を考えてみましょう。 同じ材質で10個製作した実績を選び、ページのリンクに次のような案内を添えてみてください。
アルミ製部品の試作例をお送りします。加工内容と検査方法をご覧いただけます。 掲載例は10個の製作実績です。今回は20個とのことですので、図面を拝見して対応を確認します。 特に寸法の確認が必要な箇所や、ご希望の納期があれば、あわせてお知らせください。
次の打ち合わせでは、そのページを見ながら形状や検査条件の違いを確認します。 共通する説明を参照できるので、今回の依頼で相談したい点から話を進めやすくなりますね。
効果を見るときは、実績ページを参照した問い合わせと、商談で追加された質問を記録しましょう。 訪問数の変化だけでは、依頼に合う情報を伝えられたかまでは判断しづらいためです。 今使っている商談メモに「送った実績ページ」「送付日」「追加で聞かれた質問」の欄を足す形で始められます。 たとえば「アルミ部品の試作例/9月10日/20個の場合の納期」と残す方法です。 ページを送ったあとにも同じ質問が続くなら、説明の位置や書き方を見直す材料になります。
更新にかかった時間や、確認待ちで止まった箇所も残しておきます。 営業での使いやすさと、社内で続けられる負担の両方を確かめていきたいですね。
おわりに
まずは、営業担当者がよく紹介する加工実績を一件選んでみてください。 そのページと商談資料を見比べると、Webにも載せたい説明が見つかるかもしれません。
制作会社に相談する際は、既存の実績ページと、よく聞かれる質問を用意すると話が進みます。 実績ページの構成を整理し、誰が入力・確認・公開するかまで一緒に検討しましょう。 蓄積してきた加工実績を、次の相談でも使えるページに少しずつ整えていければ大丈夫です。